今回はアカデミー賞を受賞した韓国映画「パラサイト」を振り返りながら考察、感想を述べたいと思います!
いやあ…非常に奇妙で興味深い映画でした。アカデミー賞を受賞するわけですね。
※この記事はネタバレを含みます。まだこの映画を観られていない方はネタバレなしの記事をご覧ください。
パラサイトの簡単なあらすじ
この記事の画像引用:(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED
もうこの記事を読まれてる皆様には不要かと思いますが、一応あらすじをおさらいしておきましょう。
韓国の”半地下”と呼ばれる、アパートの下に作られる安い賃貸で暮らす一家。
家に小便をかけられたり、生計は内職で立てたりと大変な生活をしています。
そんな時、一家の長男である主人公ギウの友達、ミニョクがある仕事を持ちかけてくるところから始まります。
ギウはこれを「しめた!」と思い、家族全員をその仕事に紹介していくのです。
まず”パラサイト”と言うタイトルの意味
それではどんどん考察や解説をしていこうと思いますが、まずはパラサイトのタイトルの意味から。
パラサイトは日本語で「寄生」と言う意味ですが、韓国のタイトルになると「寄生虫」と言う意味になります。
この「虫」が付くか付かないかでかなり印象が変わってしまいますよね。
パラサイトのストーリーはこの「寄生虫」と言う言葉を軸にして展開していきます。
パラサイトの”画角”
パラサイトでは”画角”が素晴らしいとかなり評価されています。
それは撮影する角度で貧富の差を表しているところ。
もちろんお金持ちのパク一家の家が上にあり、半地下に暮らすキム一家の家が下にあるのも勿論ですが、キム一家は上からのアングルがかなり多いです。
これは「世間から見下ろされる」と言う意味になっているそうです。
また逆のパク一家は下からのアングルが多いです。
パク一家は富裕層なので見上げなくてはならないと言うことですね。
「寄生虫」としての描写
それではパラサイトのタイトルになった「寄生」や「寄生虫」としての描写はどのあたりだったのか解説していきたいと思います。
私が思うにですが、
- “地下室”に家主から隠れて暮らすスングァン一家
- パク一家がキャンプに行き、隠れて食べ物を食べるキム一家
- その後、パク一家が帰宅し机の下に隠れる父・長女・長男
- お金持ちパク一家の長女ダヘのベッドの下に隠れる長男
- 机の下から這いずって逃げる父・長女・長男
この辺の描写は「虫」を象徴してるように感じました。
特に父が逃げ遅れてパク一家が起きてしまい、ピタリと止まるシーンはまさに”ゴキブリ”のようでした。
また「寄生する」描写はと言うと、
- 何もない地下室に食べ物を持ってきてほしいと頼むスングァン一家
- 生活や食事、仕事に不満がありパク一家にどんどん乗り込むキム一家
- 家事や子守・運転が満足にできず、人に頼むパク一家
とこの作品に出てくる3家族がそれぞれ誰かに寄生しています。
パラサイトに出てくる全員が誰かに寄生しないと生きていけないんですね。
一見スングァン家は妻が家政婦として解雇されてしまったし、この一家に寄生する人はいなくなるじゃないかと思われがちですが、
スングァン家がいなくなるとあの電気が付かなくなってしまいますね。
パラサイトで描かれている”貧富の差”
パラサイトの大きなイメージとして”貧富の差”が強く描かれていますね。
具体的に言うと、
- 見て分かるそれぞれの家の格差
- それぞれの一家の余裕の有無、言葉遣いの良さ・悪さ
- 食べている物の違い
- 豪雨で地下のキム家は水没してしまったが、パク家にとっては「PM2.5が少なくなっていいわね」
- 水石のプレゼントに「食べ物が良かった」と言うキム家母と、パーティでプレゼントを禁止にしても手土産をもらってしまうパク家母
- レコードで芸術を楽しむ地下室夫妻のスングァンと、自ら歌ったり楽器を奏でたりして芸術を作る富裕層
などなど、様々な角度で貧富の差が描かれています。
これを観て私は「今もこんなに貧富の差があるのだろうか?」と思うくらい身近に感じませんでした。
ですが現在も韓国では”半地下”が存在しているとのこと。
日本のカニカマを配り歩きたくなりました…..。
ただ、この貧富の差は日本人の私たちの身近にもあるんです。
高層マンションは階が高くなるほど値段が高くなりますし、昔から”お城”はとても高いところに建設されています。
「上に住む人は富裕層」と言う概念はどの世界でも消えないのですね。
気付いた時にゾッとした劇中のネタバレ
こちらはお金持ち一家の長男、ダソンが書いた「自画像」。
一度映画を見た方ならもうお分かりかと思いますが、自画像ではなく”地下室”に暮らしていた「幽霊」のスングァン夫ですよね。
怖くなってしまった方に言いたいのですが、この絵は人気の画家の方がこの作品のために描いたものなのでフィクション絵画になります!
右下の「暗闇」から矢印が続いていますね。
ダソンは彼が”地下室から上がって来ていること”を知っていたのでしょうか?
そしてこちらはもう一枚のダソンの絵。
こちらの”彼”は頭が血まみれで、何か剣のようなものを持っていますね。
そして下には緑の芝生….もちろん最後のあのシーンです。
ダソンはこれから起きる悪夢を予言していたんですね。
ダソンが気づく数々のストーリー
これらを見ると、ダソンは様々なことに気づき予言していたことが分かります。
- 半地下の長男ギウが初めて訪れた時、矢を放つ
- 半地下の父と母の臭いを「同じにおいがする」と言う
- 誕生日には”幽霊”が怖くて家に入らない
- それでも家にいると言う家族の為に無線機を買ってもらう
- 半地下のキム一家が家から脱出した時、「緊急事態発生」と無線する
ダソンはあまり劇中で多くを語ったりせず登場シーンも少ないですが、
それでもかなりたくさんのことを教えてくれています。
何故ダソンはギジョンに懐いたのか?
手がかかるパク家の息子、ダソンですが、母の言うことを全く聞かないのにギジョンの言うことはすんなり聞いてしまいます。
これは劇中でもあまり語られず謎でしたが、ポイントだと思ったのは”スキンシップ”。
パク一家の母ヨンジョンはダソンと全くスキンシップを取ろうとせず、距離も常に遠いのです。
ですがギジョンはダソンとの距離も近くスキンシップをきちんと取っていたように見えました。
また家政婦とも連絡を取り合ったりしていて、「におい」が分かるにも関わらず仲良くしています。
ダソンには偏見と言うものがないことが分かりますね。
これに気付いた時、ダソンはとてもいい子なのにあんな災難に出会ってしまってとても心が痛みました。
奪われる領土
また、ダソンがインディアンのコスプレを始めるのも伏線と言われており、
アメリカは昔インディアンが住んでいた地域なのですが、白人に奪われてしまいます。
“白人”に奪われるのを恐れたインディアンはテントにこもってしまったのかもしれません。
また、金持ちパク家の母は娘のダヘに英語を習わせたり、自ら英語を多用します。
それもダソンが母に懐かない一つの要因だったのかもしれません。
個人的に思うたくさんの疑問
私的にはこのパラサイトにたくさんの疑問が残っており、監督も解説されていません。
考察もかなり色んなものを見ましたがしっくり来る解答がなかったものをまとめていきます。
あのライトの仕組みは何故作られた?
スングァン夫が必死につけていたライトですが、なんであの仕組みになったのでしょうか。
あの家は戦時中の時に建築家が作ったものだそうですね。
- 元々モールス信号でSOSが発信できるようにするため?
- その頃から”地下室”には奴隷が住んでいた?
このライトの仕組みに関しては謎のまま終わってしまったような気がします。
ダヘの色恋気質はなんだったのか
こちらについても劇中ではあまり明かされませんでした。
金持ちパク家の娘、ダヘはミニョクとも恋に落ちていましたよね。
最初はギウが騙されているのではないかとヒヤヒヤしましたが、
最後のシーンで瀕死のギウをおぶって助けてくれたのはダヘでした。
ギウが生き残ることができたのはダヘのおかげだったかもしれません。
ダヘはあまり家族と馴染めていなく、世話を焼いてくれる家庭教師が大好きだったのでしょうか。
韓国の就職難について
半地下に住むキム一家は家族全員職がなく、子供は大学にも入学出来ていません。
日本だと「怠惰な家族だな〜」と思われがちですが、劇中ではパク家での仕事を家族はテキパキこなしていきます。
「え、なんだ、仕事できるんじゃん。」と思った人は多いと思います。
実は韓国は「仕事が出来る・出来ない」だけでは就職が出来ません。
まずはTOEIC700点以上を取るくらいの学歴が必要なのです。
しかもそんな就職の仕方である韓国は、TOEIC700点以上を取る人が山ほどいます。
その中で更に学力を上げたり、スキルを身につけて戦っていかなければならないんですね。
ですので就職をする為に何年か勉強する、大学に入る、などは韓国では当たり前のワードのようです。
ですので就職難である半地下のキム一家でさえ頭が良く、パク一家での仕事をこなすことが可能なんですね。
結局”計画する”のと”無計画”はどちらがいいのか?
パラサイトでは「計画は?」「無計画だ」などと言う言葉がちらほら出てきます。
映画を見終わった後、「結局どっちがいいと言うことなんだ?」と考えました。
私の個人的な感想としては、「計画を立てた方がいい」かなと思いました。
何故かと言うと、半地下のキム家の父は「無計画」で人を殺し指名手配となります。
ですが一家がパク家に「寄生」している間はきちんと計画があり、寄生も上手く行っていました。
ただ上手くいかなかったのは予想外のことが起き始めた時。
パク家で地下を見つけてしまい、予想外のことが起きた瞬間から計画が崩れていきます。
その後パク家から抜け出して長女のギジョンが「計画はあるの!?」と取り乱しますが、
ここできちんと計画を立てていたら結末が変わっていたかも…と思いました。
最後のシーンも、全員が無計画だから起きてしまった出来事。
もちろんパーティを開いたパク家の母ヨンジョンも「無計画」でしたね。
波紋を呼んだラストシーン
ラストシーン、長男のギウは父を助けようと妄想をしますね。
あのシーン、誰も老けてなかったので一瞬で妄想だと理解できました。
このラストシーンは大変衝撃で、この映画の続きに関しては賛否両論となっています。
その中で多く語られているのは「ギウは絶対に父を助けられない」と言うこと。
理由としては、劇中で父は「計画は必ず失敗する」と発言していることと、
「寄生」しないギウの給料ではあの家を購入するのに500年かかると監督が発言していたこと。
ただ私は先ほど書いた通り、「計画をすると成功する」派です。
ですが劇中で描かれたギウの妄想は、ほぼ「無計画」に感じました。
ただ理想を妄想しただけで、あの家を買う具体的な計画は明かされていません。
あの家を買うのに具体的な「計画」があるのであれば、ギウは家を買うことに、内見をすることに成功すると思いました。
パラサイトを観た私の率直な感想
パラサイトでは「格差」について描いていますが、私には3つの家族に格差はないように見えました。
みんなそれぞれ芸術を好きでいたり勉学に励んだり、人を愛したり。
全く同じように過ごしていて、違うのは”持っているお金の数“だけに見えました。
世界は所持金の数を「格差」だと言うけど、持っているお金が多くても少なくても同じように悲劇は起きました。
誰が一番悪いのでも悲しいのでも幸せでもないストーリー。
ある意味、全て平等だったと思いました。
映画「パラサイト」の個人的☆評価
私の「パラサイト」の個人的評価はこちら!
(4.5 / 5)個人的に良かった点
- 奇妙な話なんだけど、何故かその世界観にずっと浸っていたくなる
- 「貧富の差」や「格差とは何か」を考えさせられた
- 自分に当てはめると悲しくて悲しくて非常に感化された
- 人生を変えられたと言っても過言ではないストーリーだった
個人的に残念だった点
- とにかく結末が切なすぎた。
- 私だったらもう一度長男のギウを家庭教師に向かわせて終わらせた
- でもこの切ない結末だったから良かったのであろう
- それにしても切なすぎた(笑)
※とても個人的な意見になりますのでご注意くださいね!